柴田龍一氏評「正統派の実力者というにふさわしいハイレヴェルな演奏」
彼女は、日本、アメリカ、ヨーロッパ諸国だけでなく、東南アジア諸国、南米諸国などをはじめとして、世界中津々浦々で演奏活動を長く継続しており、現在に至っている。そして、舞台さばきにも余裕をみせる彼女は、困難なパッセージでも全くたじろがない非凡なテクニックをもっている反面、デリケートな表情の陰翳や切れ味の良い表現の冴えにも事欠くことがなく、このライヴで真に傑出したフルーティストであることを聴き手に印象づけているのである。
ベスト1位に選ばれました!
音楽の友2022年2月号
特集「コンサートベストテン2021」
~日本を代表する評論家による~
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「フルートリサイタル」2021年 東京文化会館
《 自主リサイタル歴 》
- 第1回1985年石橋メモリアルホール
- 第2回86年サントリーホール
- 第3回87年サントリーホール
- 第4回88年サントリーホール
- 第5回89年東京文化会館
- 第6回90年東京文化会館
- 第7回91年東京文化会館
- 第8回92年東京文化会館
- 第9回93年東京文化会館
- 第10回94年東京文化会館
- 第11回96年東京文化会館
- 第12回98年津田ホール
- 第13回99年朝日生命ホール
- 第14回2003年津田ホール
- 第15回05年紀尾井ホール
- 第16回09年東京文化会館
- 第17回12年東京文化会館
- 第18回13年キリスト品川教会グローリアチャペル
- 第19回16年東京文化会館
- 第20回18年東京文化会館
- 第21回21年東京文化会館
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CD「香る薔薇の雨降るテレーゼ」(4月19日東京文化会館リサイタルライブ)2021年8月25日発売 !
2021年4月19日東京文化会館リサイタルをライブ収録。ナミ・レコードよりCD発売。
税込2,750円 ※ご注文は本サイトお問い合わせよりご連絡ください。
〇 このアルバムのこと
筆者は、2021年4月に紫園香氏というフルーティストの演奏に接し、めったにない深い感銘を受けた。ムジカノーヴァ誌に掲載されたそのコンサートの批評を以下に引用しながら、その時の体験を振り返ってみたい。―「紫園は、あらゆる音域でムラのない豊かな響き、ゴージャスで美しい音色、精確で安定したテクニックの持ち主であり、演奏解釈や楽曲の把握などの面からも正統派の実力者というにふさわしいハイレヴェルな演奏を聴かせていた。共演者たちの顔ぶれも豪華であり、紫園の本格派のソロを堪能できただけでなく、こうしたメンバーたちとの密度の高い共演も、このリサイタルの大きな聴きどころになっていた。さらに当夜の大きな聴きどころとして、このコンサートのために作曲された藤井一興作品に筆者が特別に深い感銘を受けた事実を記しておかなければならない。作曲家でもある藤井は、最近この領域でもかなりの積極性を示しているが、フルートの音域を極めて幅広く活用し、非常に彫が深く高度な精神性が追求されたこの新作は、すこぶる芸術性が高い創作であり、フルーティストに至難な演奏技術が求められる相当な難曲であるが、これを見事な安定性を保持して立派に吹き切った紫園の力量も、特に印象に残るポイントであった。」―、これを契機に紫園氏について調べてみた筆者は、演奏家としての彼女が只ならぬキャリアを有していることを識った。彼女は、日本、アメリカ、ヨーロッパ諸国だけでなく、東南アジア諸国、南米諸国などをはじめとして、世界中津々浦々で演奏活動を長く継続しており、現在に至っているということである。そして、舞台さばきにも余裕をみせる彼女は、困難なパッセージでも全くたじろがない非凡なテクニックをもっている反面、デリケートな表情の陰翳や切れ味の良い表現の冴えにも事欠くことがなく、このライヴで真に傑出したフルーティストであることを聴き手に印象づけているのである。
〈柴田龍一/ライナーノーツより〉
(クラシック音楽情報誌ぶらあぼより)
〇 レコード芸術2021年10月号CD評
演奏家としての一途な信念を伝える、自信に満ちた力強さを感じる演奏だ。テレマンの《無伴奏フルートのための12の幻想曲》第1番では、テクニックへの挑戦にこだわるのではなく、無伴奏表現の可能性を深く探ろうとする姿勢が好ましい。バッハ《音楽の捧げ物》からのトリオ・ソナタは、藤井のほかヴァイオリンの沼田園子ら、力量豊かな奏者たちによる活気に満ちた演奏。ライブの高揚感が熱っぽく伝わる一場面だ。締めくくりはフランセだが、選ばれたのが《王宮の音楽》とはきわめて珍しい。美しい(とりわけ第2楽章<バラード>)演奏だ。(大木正純)
彼女が就いた師の中には吉田雅夫、金昌国、アラン・マリオン、さらにはかの伝説的なフルーティストであるモイーズまでもが名を連ねており、それだけでも壮観だが、このCDに収められた演奏を耳にして、美しく多彩な音色や表現力の豊かさに、それぞれの師から学んだ学びの大きさを窺うことができる。テレマンを聴いていると、彼女の力量の確かさが分かる。後半の藤井の新作(これがなかなかの佳作)とフランセの珍しい作品に彼女の力量が十全に発揮されており、藤井をはじめとする共演者たちもなかなかの好演を展開しており聴き応えがあった。(中村孝義)
〇 ぶらあぼ2021年10月号CD評
紫園香は、国際的に演奏活動を展開する実力派フルーティスト。今年4月に行ったステージのライブ録音は、彼女が敬愛する大バッハの作品を軸に。バロックは時代特有の作法を踏まえつつ、モダン楽器ならではの表現を追求。そして、ポツダム宮廷で下賜された主題に基づく「音楽の捧げもの」は、王宮をイメージしたフランセの舞曲集と、時空を超えて共鳴する。かたや、共演のピアニスト藤井一興による委嘱作品などでは、鮮烈な響きの空間を構築。“アンコール”に置かれた蒔田尚昊(冬木透)の新聖歌「ガリラヤの風香る丘で」の深い祈りは、聞くものへ深い余韻をもたらす。(寺西 肇)
〇 時事通信特選CDに選出 音楽評論家・柴田龍一氏
紫園は、ゴージャスで美しい音色と正確で安定したテクニックの持ち主であり、演奏解釈的見地からも正統派の実力者というにふさわしいハイレヴェルな演奏を聴かせるフルーティストである。地球上の津々浦々で年間100回程度のステージをこなしているという彼女は、国内でもリサイタルや録音に活躍しているが、この彼女の最新のライブは、今回が委嘱初演にあたる藤井一興の「香る薔薇の雨降る聖テレーゼ」という注目作も含んでおり、紫園の数ある録音のなかでも特に着目される必要がある1枚と考えてよいだろう。収録曲目すべてが最高レベルの演奏であるが、彫が深く烈しい表現のなかに悲痛な感情を内在させた藤井作品は、高度な精神性が結晶したすこぶる芸術性の高い創作であり、フルートの音域を極めて幅広く活用した恐るべき難曲でもある。このような特別な作品を見事な安定性を保持して立派に吹き切った紫園の力量は、非凡の一語に尽きるものであり、筆者に大きな驚きと深い感銘を与えた。1人でも多くの聴き手とその体験を分かち合いたい名演である。精妙かつ緻密に彫琢されたテレマンのファンタジーは、彼女の力量を特に強く実感できたもう一つの場であったが、ここでは、華美な音色の美しさと表現の品の良さが光彩を放っていたこともが特筆される。バッハの2曲のソナタとフランセのトリオは、ピアノの藤井一興、バイオリンの沼田園子、チェロの三宅進といった傑出した共演者たちを得て、極めて緊密でバランスの良いアンサンブルが繰り広げられており、久々に手応え十分な演奏を堪能することができた。優れた演奏家がアンサンブルを行う際には、それ相応の優れた人材が集まってくることが多いが、この3曲は、まさにその好例というにふさわしいサンプルであろう。
【 東京文化会館 リサイタル 】
【 東京オペラシティ 】
【ピアニスト藤井一興氏と リハーサル中】
【CD録音風景 藤井一興(Pf.) 石川滋(CB.) 柳瀬洋(Cl.)各氏と】
【 東大オーケストラ 】
海外公演
【 ブラジル公演 】
世界のクラシック界で、その実力を高く評価されている紫園香。彼女にはもう1つクリスチャン音楽家としての活動がある。キリスト品川教会教音楽伝道師としても世界中に派遣されている。またハンガーゼロ親善大使として、世界の飢餓問題に積極的に関わり、ケニアコイノニア教育センターをはじめ、世界中の飢餓で苦しむ子供達の教育のために、音楽を通して支援活動を展開している。紫園がヴィジョンとして追い求めるものは、音楽による世界平和である。